Gorge3分間ハッキング
これはGorge Advent Calendar 2014年1日目の記事です。
Gorge Advent Calendarは、「Gorge」に関することなら何でもOKの持ち寄りブログカレンダー(みたいなもの)です。Gorgeについて何か語りたいこと、聞きたいこと、教えたいこと、怒りたいこと、ディスりたいことある方は、この機会にぜひぶちまけてください!
ということで第一回は最速Gorge作成研究会の成果発表「Gorge3分間ハッキング」です。
Gorge Advent Calendar 2014 - Adventar
Gorge 3分間ハッキング
ここ3年くらいいろいろなGorgeを作っていて、結構毎回試行錯誤で作っています。同じ方法をやり過ぎると同じようなアウトプットになってしまうこともあり、定跡を定めずいろいろと方法を変えて悩みながらやっています。そしてその分時間もかかってしまうことが事実であります。
ただ、その中でもこれが最も最短! という方法があります。あまりにも簡単なので自分の中では封じ手に近いのですが、あまりにも簡単なのに意外な展開を見せる危険な魅力がありまして、ついフラフラとやりたくなってしまう危険メソッドであります。
たぶんGorgeでしか成立しにくい荒っぽい方法だと思います。ここでは自戒も含めて、その「3分間ハッキング」と題して(実際は3分以上かかってますがノリ的に・・・)作り方をここであえて公開します。
Gorge Advent Calendar 2014 Jingle
というわけでそのメソッドを前面に活かして、会社から帰って寝る前の1時間で作ったGorge Advent Calendarのジングルがこちらです。
ジングルというには長すぎという噂もありますが、無闇にタムが鳴ってる感はゴルいですね。
さて、このトラックはほぼ1つのMIDIクリップから成り立っています。しかもそのMIDIクリップの元ネタはパクりなところが申し訳ないところです。それをひたすらコピペして作っただけであります。つまりパーフェクト・コピペ・ゴルジェ。コピペって楽ですよね~。アーティスト性皆無であります。ま、「アートと呼ばないこと」がゴルジェのルールであるので、全く問題ないわけですよ。
このことの価値判断はさておきながら、どういう風にして作ったか、ということが今回のお題として紹介していきます。
MIDIサンプリングでゴルジェライズ!
「MIDIサンプリング」とか言うと話は大げさになりますが、まあありもののMIDIクリップ使いまわそうぜ、ということが今回の話の趣旨になります。
で、意外と無料で使えるのがあるもんなんですよ。私はドラム・キットのNATIVE INSTUMENTS Kontaktの「Studio Drummer」を結構多用してます。というかそんな機材持ちではないのでひたすらこれを使っているという事情もあります。
で、実はこれにいい感じのMIDIクリップがついているんですよね。
▲NATIVE INSTRUMENTS KontaktのStudio Sessionの画面。右上の「GROOVE」からMIDIクリップをコピペできる
ごくテキトーにMIDIクリップを上の画面から選んで、お、かっこいいかも、って思ったやつをいつも使っているAbleton Liveのセッションビューのクリップにコピペするところから始まります。
▲ABLETON LiveのMIDI編集画面。KontaktのMIDIクリップが再現されている。
さて、このクリップはどういうものか聴いてみましょう!
おお、かっこいいグルーヴですね。でもま普通。ゴルくはないですよね・・・。
さてこれをどうゴルジェ化してみましょう。
ここでおもむろに、先ほどのMIDIクリップの一部を動かしてタムの音にしてみます! テキトーにいろいろ上下にズラして、グルーヴはそのままに音だけを入れ替えてタムをバカスカ鳴らします。イッツゴルジェライズ!
▲ピッチをずらしてタムの音を中心に鳴るように入れ替える
さて聴いてみましょう!
おお、いい感じでタムがバカスカ鳴ってくれてます。テキトーにズラした結果入ってしまったハットもちょうどいい案配です。
さらにコピペドリブン・トラックメイク
よし、これを中心にトラックを仕上げていくかーというわけでまたコピペ。これをLiveの機能でクリップのBPMを半分にします。
ハーフのリズムも完成しました! 簡単!
こうなってくるとやっぱりベースも鳴らしたくなりますよね、ってわけでこれもコピペしてズコっとベーストラックに貼り付けます。
(画面写真貼っても同じなので省略)
ベース音をいじって、音を短めに、あとアシッドっぽいビキビキ音をアクセントに加えるように設定してドン!
ベースできたよ~。
上モノもさらにリサイクリング
さてちょっと完成に向けて上モノを追加していきたいですね。
ジングルなので声ネタ欲しいな~と思うわけですよ。でも極度の恥ずかしがり屋なので自分の声はイヤだし、深夜に歌ってくれる友達も居ないしな・・・。
といわけでトニオ君の登場です。
▲「ジョジョの奇妙な冒険」第四部に登場するトニオ・トラサルディー
ってこっちのトニオではなくこちらです。
▲気品漂う中低域を歌う、英語版バーチャル・オペラ・シンガー(原文ママ)
そう、あの初音ミクで有名なVocaloidからTONIOさんの登場となります。
実はこのソフト、私はめちゃめちゃよく使ってます。声ネタの半分はコレです。爽やかさゼロの胡散臭いの声、どうやってもうまく歌ってくれないヘロヘロ感(単純に自分の打ち込みスキル不足です)、そしてほとんどの人がその存在さえ知らないドマイナー感! そして何より安い。どう考えても最高のソフトですね。
先ほどのようにこの話題になったときにジョジョネタをぶち込んだり「室井トニオ」とクライマー向けのネタを言ってみたり、何かと飲み会でも重宝するソフトであります。
で! これはコピペでできないのでMIDIファイルのエクスポート→VocaloidでのインポートでMIDIファイルを持ち込みます。
でいろいろと間引いてメロディっぽくして、「Gorge Advent Calendar Two Thousands fourteen♪」とインチキ臭く歌わせる・・・と。
▲VOCALOID Editorでの打ち込み画面。ここでも元ネタのMIDIクリップを最大限に活用して(コピペして)いる
一通り調整して(といってもたいしたことしてないですが)、こんな感じかなーと思ったらエクスポート!
うわぁ胡散臭い・・・・。
狙い通りのものが出来ました。
さてもうちょっと上物が欲しいなぁというわけでさらにコピペしてMIDIインストゥルメントをいろいろ試して、バイオリンの音がよさそうだったのでドン!
というわけで材料が揃いました。
ミックスして完成!
というわけで材料が揃ったので、いよいよゴールが見えてきました。いろいろ組み合わせてミックスしていきます。
先ほど作ったトニオの声は、Live上でピッチをいじったりしてちょっと変化を付けて、さらにピッチをずらした2トラックで鳴らしてさらにキモくします。さらに最後は一部だけ引き延ばしたりしてます。
ドラムは元素材・ゴルジェライズ素材・ハーフ素材を組み合わせて鳴らすようにします。
ベースはオートメーションでビキビキ言わせる瞬間を作ったりしてちょっと工夫。
というわけでドン!
▲完成時のミックスの画面
気持ちが良くなるくらい同じクリップが使い回されたトラックの完成です!
ま、実際にはここまで使い回すことはないんですが、自分のトラックでちょこちょことこの「普通のループの素材差し替えでゴルジェライズ」テクニックは使用しています。
例えばこれ。
このループはまさにこの手法で作られたやつですね。
でこの作り方どうなの? という疑問
もちろんこの作り方を推奨しているわけでもないです。自分でもここまでありもののリズム使って作るどうなんだろう?って思うところはあります。しかし、この作り方で得るものは非常に大きいし、自分の方法論に合ってると思うところがあり。
という考えに至った経緯を簡単に書きます。
ちょっと話は違いますが、自分でトラック作りはじめた10年くらい前に好きな某有名音楽家が「MIDIのクォンタイズは使わない。自分でクリップ置いて自分で調整してこそ自分の音楽ができる」ということを語っていて、「なるほどそうなんだ~」といたく感心したことがあります。
それに感化されて自分も頑張って1個1個音を置いて打ち込みしてたんですが、どうにもこうにも才能もスキルもなくて時間だけがかかる毎日・・・。1曲も完成できずに、でも「いま作ってるトラックは名曲!」という変なプライドだけあってグダグダしてました。
ここでいわゆる「Strings of Life問題」にハマったわけです。
Rhythim Is Rhythim - Strings of Life (Original Mix ...
カッコいいですよね~まさに名曲中の名曲であります。
「Strings of Life問題」とは、「俺の作っているトラックがこんな名曲になるであろう」という確信だけあって、「まだそんな名曲になっていないから完成できない!」と勝手に思い込んで1曲も完成できずにグダグダしてることを言います。というか自分が勝手にそう名付けています。
で、グダグダしてるうちに社会人になり、才能もスキルもない上に時間もなくなってくるわけで、はっきりと分かってくるわけです。「俺にはStrings of Lifeみたいな名曲を作ることはできない」という暗く重い事実・・・ってもっと早く気づけよっていう話なんですが。
じゃあどうする? まあさっぱり音楽作るの辞めようっていうのも選択肢。一度はそれもありえたんですが、いろいろ考えて自分は「とにかく素早くいっぱいトラックを完成させよう。そのための方法にはこだわらないようにしよう」という結論になりました。
とにかく完成させる、方法論にはこだわらない、そのために利用できるものは利用する。どうにもならない駄曲がたくさんできることは才能が無いから当たり前、むしろ100曲に1曲くらいたまたま面白いことができたらラッキー、くらいの考えでアウトプット重視でやるようにしました。
でその中でみつけたのがこの方法だったりするというわけです。とにかく思いつく限りのアイディアで素早く作って、作ったトラックは恥かしいけど何回も聴いていいとこを見つけて次のトラックに活かす。ダメだったら諦める。
まあPDCAサイクルを素早く回すみたいな話なんですが、こちらのやり方の方が自分にはあってるし、何より曲ができていくのは楽しいわけで。そして反応があったりしたら最高に嬉しいということで。完成させないと反応は無いわけですからね~。
このStrings of life問題周りはいろいろと書きたいことあるんですが、蛇足過ぎるのでまた別の機会に!
おわりに
というわけでちょっとトラックメイクに行き詰ったときにこの方法は意外な刺激があって非常に面白いと思うので、ぜひ試してみてください。「お前こんなお手軽に作ってるのかよ!」という批判は小心者の私は「へへへ」みたいな顔しつつ裏で凹むのでやめてください。
とにかくいろんな音楽がどんどん出てきて音楽がもっと面白くなればいいな~と思い今回は終了です。
次は小倉のGorge怪人Kazuki Kogaが何か書いてくれるはずです! お楽しみに。